チエコ2016報告その2 審査委員の方々の講評


 チエコ公開審査会は、審査委員の皆様からいただくコメントも大きな楽しみです。この頃は、エコに対する関心が年々薄れていくように感じています。そうした中で、私たちは次の世代に何を残すのかを改めて考えるきっかけをいただきました。お話は深く、語り口はソフトにユーモラスに。大事なことが、会場にいらした皆様の心に響いたと思います。
皆さまも、来年は会場でお聞きくださいね。

高橋真樹さん(ノンフィクションライター)

170211_繝√お繧ウ_0493 今日、発表してくださった皆さんは、大変すばらしいプレゼンテーションだったと思います。ただ、今年は応募点数が多かった割には、ティッシュペーパーとかトイレットペーパートか、スケールの小さいアイディアが多かったように思います。
それは日本の中でエコがごく狭い範囲に限定されて考えられてきたからなのかもしれません。たとえばレジ袋の削減を考えることも大事ですけれど、エコや環境は、本当はもっと幅広いはずです。今日の発表にあったような自転車とか断熱とか、さらには住まいとか仕事とか、いろいろなものに結びついていくのに、それに気づかなくされてしまっているのかと思いました。

僕自身もエネルギーについて取材をしながら改めて学んでいます。何年か前までは、脱原発の本を出していながら身近なエネルギーのことをわかっていなかったことがたくさんありました。湯たんぽの話にあったように、熱を作りたいのに電気から作っちゃうような機器がいっぱいあるのですが、そういう暖房器具を買ったこともありました。でも調べていくと、いかにムダなことをしていたのかわかりました。

最近、エコ住宅の取材などをしていると、外はマイナスの気温でも室内は暖房を使わずに20℃くらい保っている家はたくさん出てきています。そういうことは体感してみないとなかなかわかりません。また、脱衣場とお風呂場の温度差で倒れる人が増えているように、断熱はエネルギーだけじゃなくて健康の問題や経済の問題にも結びついています。

エネルギーやエコを考えるということは、何もティッシュペーパーをどうするだけではない世界がつながって広がっていることを、これからも伝えていきたいと思っています。また、一つひとつ実践しながら、皆さんとともにエネルギーやエコについて考えていきたいと思います。

 

藤村靖之さん(非電化工房代表)

170211_繝√お繧ウ_0506 この最終審査に残った10点は、みんなそれぞれとても温もりのあるテーマばかりでした。審査委員をやって、とてもうれしかったですね。
僕は去年の審査会の時、最後にこういうお話をさせていただきました。つなが~るズはえらい。チエコを献身的におやりになっているでしょう。
今、世の中は環境を大切にする方向からどちらかというと離れた方にどんどん行ってしまっています。たとえば僕の個人的な話でいえば、取材件数や講演会の依頼が2011年の原発事故の前年、2010年に比べて4分の1から5分の1に減ってきているんです。僕は最初、僕の賞味期限ももう切れたんだなと思っていました。ところが、今を盛りの人に「あなたはどう?」って聞くと、みんな「僕もそうです」というんです。

それで調べてみると、メディアが環境問題を取り上げる件数は激減しているんです。2011年にいったん上がって、2012年も前よりはちょっと高いレベルだったけど、2013年になると2010年までのレベルよりもストンと落ちています。だから原発事故を契機に環境とか安全といった方向に大きく動いてほしかったんだけど、残念ながらいったん右に大きく振れた振り子は右に行きすぎて今度は左に振れてそこで止っている状況を実感しています。ここしばらくはみんなで頑張らないといけないなという時期に僕たちは今いるのでしょう。やがてまたいい状態になると思います。

だから、つなが~るズの皆さんが、こういうチエコということを地道にきちっとやってくださるのはとてもありがたい。去年、「来年もぜひ続けてくださいね」とお話したら、ちゃんと今年も実践してくれたので、とてもありがたいと思っています。

去年はイギリスがEUから離脱してしまいました。なぜ離脱するかというと自分たちの国益にならないからなんですって。今度のアメリカの大統領も環境問題なんかに背を向けています。そんなことよりも、アメリカ人の雇用とか経済が大事だっていうんですね。そして、もしかしたら今年はフランスもオランダもEUからの離脱が云々されています。でも、僕たちは知っていますね。EUというのはEUの前身のEC、その前のECC、1949年くらいから環境と平和はエゴイズムでは守れない。で、エゴイズムの代表は国家エゴイズム。で、国家エゴイズムの代表は国家経済なんだから、経済をひとつにしてエゴイズムから人道主義の方に動かさなければ環境と平和は守れないという高邁な精神でECC、EC、そしてEUをつくってきたでしょう。フランスとオランダが先導してやってくれていたんだけど、僕たちはとてもありがたかった。EUのおかげでどれぐらい環境と平和がある程度守られてきたか。170211_繝√お繧ウ_0515

ところが、そういう高邁な精神を忘れて、自分の国さえよければいいという方向に今、一瞬世界は動いてしまっているような気がしています。やっぱり、去年申し上げたことと全く同じで、引き続きもう少しがんばらないといけないですね。で、来年もぜひチエコを続けていただきたいと思います。

 

宿谷昌則さん(東京都市大学環境学部教授)
170211_繝√お繧ウ_0529 チエコはこれまで3年続いてきました。最初の年は私もけっこう力が入ったのですけれども、2年目になるとちょっと応募数が減ったんですよね。ちょっとこちらの力の入り方も減ったのですが、やっぱり続けることが大事だと僕も思いました。今年の応募数は61件で、これはやはり広がり始めたんだなと、うれしい気持ちになりました。それで見せていただいて、最初の印象に残ったことは、正直申し上げますけど、今日の10点の方は別として、このぐらいのことしか考えられないんだなということでした。
それは、自分は高いところから見てそういう風に思ったと言いたいのではなく、自分ももし応募していたら、ひょっとしたらこのレベルだよな……きっと……と思ったのです。そのことにちょっとイライラしたんですよね。何にイライラしたかというと、皆さんの作品のこともだけど、自分自身にイライラする。それは何なのかなあとずっと考えていました。

世の中には色々な言葉がありますね。たとえば「脱原発」、「エコ」、「リサイクル」とか、僕たちにはそういう言葉が知らず知らずのうちに刷りこまれていますね。教育は、自分の頭で考え行動できるように教え育てることじゃないですか。でも、いま行われている教育のほとんどは全部嘘だと僕は思っています。みんな考えないですむように、言われたことをそのままやれば点数がちゃんと取れるように、それが教育になっちゃっているんですね。

僕は大学というところでずっと仕事をしてきて、環境学部というところで仕事をしているんですけど、日本は今少子化が進んで、日本の大学全体として若い人の取り合いになっています。その時に環境というのは人気ないんですよ。僕は、環境はこれから受験生が増えると20数年前に思っていて、その当時は良かったんですけど、今はどちらかというといわゆる受験戦争に敗れた人が来るんですよ。僕は入学式の後、「あなた方が敗れたのは大変いいことなんだから、自分で考えることをやっていこう」という話を必ずするようにしています。彼らは洗脳されてきていますので、こっちも洗脳し返さないといけない(笑)。だけど、なかなか信じてくれません。ものすごく根が深い問題なので、時間が相当にかかると思います。けれども、自分の頭で考え行動できるようにしていく……、そのためにこのチエコ賞は小さいけれど大きな意味があると思っていて、こういうことを続けていくことでじわじわ広がっていくと、次第に良い方向への流れができていくのだろうと思っています。

今回のご発表を聞いて、たとえば社会のしくみをつくる話、自転車の話がありました。僕は1990年ごろに北京で仕事があって行ったことがあるんです。その時のことを思い出すと、とにかくそこらじゅう自転車ですよね。当時だって中国は冬は石炭で暖房して暑すぎて窓を開けちゃうなんていうことを平気でやっていた。大気汚染も、その当時もよくなかったけれど、今はもっとひどいでしょ。そういうところで、皆が車に乗るようになって、4人乗れる車に一人で乗るのがステイタスという意識が強くなっていますからね。

もう一方で、デンマークはエコでは最先端だということは皆さんよくご存じだと思います。僕はやはり仕事の関係でコペンハーゲンにしばらくいたことがあるのですけど、朝ラッシュの時間帯に自転車がすごいですよ。それで自転車屋さんなんかもレベルが高くて、実用性だけでなく、ファッションとしてきちっとしたものを扱っている。小さな自転車屋さんもたくさんあって、ベルひとつとってもすごくいいデザインをしていて、値段もすごく高い。でも、それだけの価値がある。それが成り立っているんです。ということは、皆の考えていることが日本とはだいぶ違いますよね。ベルにそんなお金払う人は、日本にはなかなかいないですよ。

デンマークと同じならばいいという意味ではないですけれど、そういう風に両極あって、どっちの方向に行ったらいいのかは、トランプ大統領だって安倍首相だって、まともに聞かれればそうだと答えざるを得ないはずなんですけど、古くさい後ろ向きのところで自分たちがしたいことがあるので今みたいなことになっちゃっているのだと僕は思います。今の大きな経済・政治を動かしている人たちが、どうもそれは違うんだな……と気づいてもらうためには、私たち皆の一人ひとりがちゃんと自分の頭で考えて、間違ってもいいからちゃ んと判断して行動することが大切なんだと改めて思うのです。

170211_繝√お繧ウ_0532 それで、一般論だけ言っているのはダメなので、僕もちゃんと自分の頭を使って考えているんですよ……ということを紹介して、私のあいさつを終わりにしたいと思います。

最近、換気の話を考えています。この部屋、今は暖房していますよね。そこで灯油を燃やしているので、けっこう二酸化炭素が出ているわけです。それで換気しないと部屋の空気が汚れますよね。こういう部屋だと隙間風がかなりあります。木造校舎で古い建物ですから。僕の想像ですけど、おそらく1時間に少なくとも1回、あるいは2回ぐらい空気が入れ替わっていると思います。換気扇をつけていなくてもそのぐらい。ところが、断熱気密化をきちんとすると、1時間当たり0.5回、0.3回、0.2回にできるんです。

住宅の設計に関わっている方、これから家を建てようと考えている方はちょっと頭に入れておいてほしいんですけど、最近は断熱性・気密性のことがすごく言われるようになって、“高断熱高気密”ってよく言いますね。高断熱はもちろん大切です。高気密もそれなりに大切なんですけど、それを一緒くたにして考えている……っていうか考えていないことが多いように思うのです。

断熱はかなりのところまでいってもいいと僕は思いますけれど、気密の方を行き過ぎると具合が悪いんだと思うんです。そうすると、宿谷は断熱をあまりしなくていいと言っているみたいに言う人がいるんです。それは断熱と気密が同じことと決めつけているからかもしれない。そこで、こういう説明をことにしています。

私たちは寒い時にはマフラーをする、あるいはちょっと1枚羽織る。だけど、そういう時に脱脂綿を鼻の穴に詰めたり口の中に詰めたりしません。そういうことを気密と言っているならおかしいでしょ。ほっぺたに穴が開いていたら呼吸がしにくいから、そこはちゃんと塞がなければいけない。でも、脱脂綿を鼻に詰めるのはお棺に入るときだけですよ。そういう話をすると、たいていの方は理解されます。家をこれからつくる方は、断熱気密とかそういう専門用語を聞かされた時に、それにだまされないように是非していただきたい。

それからさっき質問で浮力のことでコメントしましたけれど、今の部屋で換気をしようと思って換気扇をセットしますね。100ワットの電力で動くような換気扇だとしましょう。浮力というのはなぜ働くかというと、俗にいう自然エネルギーなんですよ。僕らのからだは発熱していますね。それじゃ、それがどれぐらいのエネルギーの量なのか、ちゃんと電力と比較できるように計算してみたんです。そうしたら、換気扇のモーターに入る電力が1とすると、浮力の自然エネルギーはどれぐらいか。どのぐらいだと思いますか。だいたい500分の1ですよ。チエコですね。だから、身近なところにある自然のポテンシャルを活かせる工夫が重要だという話になるんです。

こんなことも、僕はたくさん間違えたら行きつ戻りつしながら、正答らしきところに辿りついたんです。そうすると、原発で電力をつくって換気するなんていうのは全くナンセンスだということがやっぱり改めてわかってしまう。たぶん、いろいろなところで似たような話があると思います。このような考え方の道筋を皆さんでシェアして、さらにまた一歩でも半歩でも前に進むようにして行ければいいなと、今日いろいろお話をうかがいながら思いました。どうもありがとうございました。


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